翌日からの戦略会議では、福島ブックレット委員会の大橋共同代表の歓迎の挨拶に続き、まず福島出身のフリージャーナリストの藍原寛子さんに「福島の現在 原発事故7年の課題」と題してレクチャーをいただきました。
震災後、福島を拠点に、原発事故の被災者、避難者を現地からレポートしつつ、国内・外の被ばく地や原発立地地域を訪問している藍原さん。原発事故による人々のつながりの分断、「帰還政策」が生み出す新たな危機、健康影響に関する議論が個人の「心の問題」に矮小化されていることなど現在の問題に加え、世界中の核被災者の人びとがつながり、福島の原発事故を契機として脱核被災のためのネットワークを構築していくことの重要性についても話していただきました。
その後、海外ゲスト全員に自国の原発をめぐる状況、政策や社会の変化などについて発表していただきました。
台湾では、3.11後の市民運動の中で映画祭、写真展、音楽など様々な表現手段が戦略的に使われたこと、韓国では、新コリ原発5・6号機建設再開かをめぐる市民参加の公論化委員会で大統領の公約に反して再開意見が上回ったこと、非常事態宣言が続くトルコでは政府による活動家やジャーナリストへの締めつけが厳しさを増していること、内戦の続くシリアと国境を接するヨルダンでは原発への砲撃のリスクが現実味を帯びていることなど、それぞれの事情が報告されました。
↑トルコの事情について発表するプナール・デミルジャンさん
↓インドのアミルタラージさんは、自分が行っているユニークな路上写真展の様子も報告してくれました。
「フクシマについてもっと知りたいこと、必要な情報」について出し合ったところ、避難母子の状況、復興プロセスへの市民参加の状況、賠償の内容などがあげられました。その後、「誰に」「何を」「どう」伝えるか、を考えるワークショップを実施。各自が想定する啓発対象者が、学生・若者、政府や議会関係者、市民社会、教育現場などそれぞれ違う中、相手の関心に合わせた有効な伝達手段は何かを一緒に考えました。
今回の会議を経て、委員会として自分たちだけで新たな教材をつくるのではなく、原発事故後に作られてきた様々な映像、写真、絵本などを、それぞれの著作者の了解や協力を得ながら各国の対象者のニーズにあった形で提供し、それらを一緒に教材化していく活動が有効ではないかと感じました。また、データや証言など、福島の現状について客観的事実を伝える基本となるエビデンスを集め、アクセスしやすい形で提供することの重要性もあらためて認識しました。
来年度は2~3か国で、その国の伝達者候補の人たちとともに、実際にワークショップなどを開催する予定です。